ワンちゃんに関する神話- その3
「分離不安症」は、ワンちゃんが寂しがっているのが原因だと思っていませんか?
いわゆる「分離不安症」というのは、ワンちゃんの大きな問題行動のひとつですが、本当にワンちゃんは寂しがって吠えているのでしょうか。私たちが扱う問題行動の中で、「分離不安」はとても多いです。分離不安は、ワンちゃんにとって精神的に非常に大きな負担になります。症状が軽い場合は、飼い主の方が帰宅したときの大興奮。重症の場合は、飼い主がいない間ずっと吠え続けたり、トイレやお風呂にもついて来る、という症状です。この症状を誤解してしまう飼主の方は非常に多いのですが、犬は寂しいから一人のときに吠えるのではありません。もちろんこれも全くないわけではありませんが、最大の原因は他にあるのです。
私のお客様の中にこんな方がいました。1匹目のワンちゃんが分離不安で、飼主さんのいない間ずっと吠えていたので、どなたかに相談されたところ、「きっと一人で寂しいのよ。もう一匹飼ったほうが良いですよ。」というアドバイスを受け、2匹目を飼いました。すると、分離不安のワンちゃんが2匹になりました。そして、とうとう3匹目も飼うことになり、3匹の分離不安のワンちゃんを飼う羽目になってしまったのです。
また別の例としてこんな話があります。6ヶ月のヨークシャテリアがいました。分離不安が始まり、飼い主が留守の間中、声がかれるまで吠えていたので、「お預け」のしつけに出されました。6ヶ月経って帰ってきましたが、このワンちゃんの分離不安は治まるどころか以前よりもひどくなっていました。
それでは、どうしてこの分離不安が起こるのでしょうか。ワンちゃんというのは群れで生活する動物です。群れにはリーダーがいて、そのリーダーが群れを守り支配します。犬は私達の事を「群れのメンバー」とみなし、群れにリーダーが必要だと認識します。人間である飼い主がリーダーにならなければ、犬がリーダーになってしまうのです。自分が、群れを守らなければいけないと思っているリーダーならば、分離不安症になることがあります。群れの規則で、リーダーなどの強い者達だけが、群れから誰の護衛もなく離れていくことが許されるのです。もし犬自身がリーダーだと信じていれば、リーダーではない弱いメンバーが、リーダーの護衛なしに群れから離れていくことに対し、とても不安になります。人間の社会でも、自分を守ることができない2、3歳の子供が、一人で家の外に出て行ってしまえば、お母さんは気が狂うほど心配するでしょう。それと同じなのです。
私達の分離不安症に対するアプローチの仕方は、この群れの順位と言う観点から進めていきます。リーダーシップを取るためにはどうすれば良いのかを、ワンちゃんの立場から見て飼い主の方にご指導します。このリーダーシップを取る方法で、おやつで釣ったり、ワンちゃんに体罰をしたりすることはありません。ワンちゃん同士がとるコミュニケーションの方法を使い、飼い主にワンちゃんから見て尊敬をされるリーダーとなって頂くのです。
もしあなたのワンちゃんがこの分離不安に当てはまるようでしたら、すぐにプロのしつけの方を探してください。ワンちゃんにあなたのことを心配させるのは、もうやめさせてあげませんか。